かいとのへや

かいとのへや

ちまちまと投資しながら生きている社会人の雑記ブログです。

移転価格税制の仕組み(国によってちがいます!)

移転価格税制は親会社と海外子会社の間での有形・無形資産のやり取りにかかる税金を定めた法律です。法人税の税率は国によって異なるので、極端な話、タックスヘイブンで利益をあげるような取引構造にすれば税金逃れができてしまうのです。

そのため、各国は移転税制を設定し、多国籍企業の税金逃れを防いでいるのです。

お金

1. 考え方(基本三法+α)

移転価格の基本は第三者との取引で使われた価格を使うことです。第三者との価格はArm's lengthと言われていますが、この価格はどう設定すればいいのでしょうか。日本では計算のベースに何を使うかによって数通りの考え方があります。今は企業活動の複雑化に伴ってTNMM法が主として使われているようです。

粗利に着目:CUP法、RP法、CP法

営業損益に着目:TNMM法、PS法

①独立価格基準法(CUP法)

自社から関係子会社に販売する際の粗利と自社から他社に販売する際の粗利を比較する方法です。

②再販売価格基準法(RP法)

自社から関係子会社に販売する際の粗利と他社から他社に販売する際の粗利を比較する方法です。

③原価基準法(CP法)

上の2つは販売価格と粗利で比較していますが、CP法は原価で比較する方法です。

④取引単位営業利益法(TNMM法)

コア営業損益を同業他社と比較し、同じレンジに入っているか確認する方法です。

2. 移転価格対策をしっかりしないと…

①追徴課税の可能性がある。

当たり前ですが、脱税とみなされると追徴課税の可能性があります。

②根拠の分からない移転価格を支払うことになることも

日本の規定では2016年から連結総収入額1,000億円以上の企業は移転価格文書の作成が義務付けられました。移転価格文書として作成するのは次の3つです。

  • 事業概況報告事項
  • 国別報告事項
  • 最終親会社等届出事項

これらは税務局からの監査時に提出する必要があります。ちなみに連結総収入額が1,000億円以上の企業でなくてもローカルファイルの作成が義務化されています。ローカルファイルが提供できない場合は課税当局がシークレットコンパラブルという推定課税の方法をとります。万が一、この手法が取られた場合は守秘義務から計算諸元をもらうことができないため、非常に不利な立場となる可能性があります。

3. 各国の移転価格税制

移転価格税制は租税回避を防ぐという大枠は同じものの細部や申請方法では違っている点があります。移転価格税制は改訂されることもあるので、進出の際には時間が必要です。

アメリ

国際税務問題が大きくなるにつれて相互協議手続きや事前確認を重視するような体制を取っているようです。ローカルファイルに準ずるものの作成に関する法令はありますが、マスターファイルについては規定がないようです。

移転価格税制に違反した場合はペナルティーが課されるそうです。

②中国

25%以上の出資関係のある企業間の取引が対象になります。移転価格文書の作成義務はあり、守っていた場合は追徴課税が免除されることもあるようです。

 

移転価格は各国によって細部が違っていますが、移転価格文書の作成やArm's lengthの計算方法は同じようなものが多いので、日本のものを理解すれば各国に当てはめることができそうです。ちなみに法整備がしっかりしていない国だと随時制度が変化していくので注意が必要です。

参考:

「移転価格税制の仕組み」朝日税理士法人