海外子会社に融資を行うには(増資vs貸付)
海外子会社の資金繰りが行き詰まって親会社からの支援が必要になるとき、取れる方法は増資か貸付の2つです。増資した場合は配当で貸付の場合は利息で子会社からの資金回収を行いますが、どちらの方が税務コストが高いのか気になったので調べてみました。
1. 増資の場合(配当で回収)
配当の場合は税引後利益から配当原資が出てくるので、海外では配当支払いによる税金控除はありません。一方、日本の親会社では「外国子会社配当益金不参入制度」があるので、配当額の95%は益金不参入(非課税)とすることができます。
ただし子会社を設立している国での配当源泉徴収税は日本での税金控除の対象とならないため、純粋な税務コストとなります。日本は各国と租税条約を結んでいるので、もし税率が条約よりも高かった場合は「租税条約に関する届出」を提出することで租税コストの削減になります。
したがって配当での回収にかかるコストは下記の通りです。
※ちなみに配当が損金不算入になる国から配当であった場合は、日本で益金不参入は適用されないそうです。
2. 貸付の場合(利息で回収)
貸付の場合は利息で回収します。利息は海外子会社では損金として算入されるため、日本では課税対象となります。税率控除はないので、法人税率30%が適用されます。
したがって利息での回収にかかるコストは下記の通りです。
コスト=配当額*30%
※貸付の通貨によっては金利がつくところもあるので、配当と貸付のコストを比較する場合は念頭に置いておいてもいいかもしれません。
3. 結局どちらを選ぶ?
税務コストとして見るならば増資の金利が30%を超えない場合は、配当の方が良さそうに思えます。
現地配当徴収税率は0%の国も多く、日本の法人税率が30%と世界でもトップ10に入る税率の高さであることを考えると30%を超えることも少なそうです。
もちろん資金繰りであれば同じregionでファイナンスカンパニーを設立するなど親会社からの資金送付以外の方法もあるので、色々検討してみると楽しそうです。